「不妊症」と「不妊状態」

「不妊症」とは

日本では、健常に性行為があって1年間妊娠しない場合を「不妊症」と定義しています。近年は不妊症になりやすい病気も少なくないのですが、40%が女性側、40%が男性側、20%が双方によるものといわれており、ほぼ男女半々に原因があると言われています。

一陽館では「不妊状態」と考え、取り組んでいます

不妊症は病気ではなく「体が妊娠しづらい状態になっている」つまり「不妊状態」であると考えます。妊娠を望む場合に、体の状態、つまり「不妊状態」を改善することは、不妊治療歴の有無や年齢などとは関係なく、どのような状況のかたにもまずは必要な条件であるといえます。体自体が「妊娠しづらい状態」のままでは、不妊治療のサポートがあっても順調な妊娠を経て無事に出産までたどり着くことは難しくなってしまいます。
まずは、妊娠を迎える「体の状態」を整えることから始めてみましょう。

■当店にご相談に来られるお客様の不妊の原因

■ 月経周期… 月経不順・無月経・月経過多・月経困難症など
■ 器質的… 子宮内膜症・子宮筋腫・卵管閉塞・卵巣嚢腫など
■ 着 床… 着床障害・流産など
■ ホルモンバランス… 排卵障害・無排卵・黄体機能不全・高プロラクチン血症など
■ 男性側… 乏精子症・無精子症・精子の数や運動率の問題など
■ 体質的… 貧血・肥満・虚弱体質など

※一陽館薬局の不妊・子宝相談において2012年1月~2018年5月に妊娠報告をいただいた605組の集計結果です。

主な不妊の原因

卵子について

卵子は「数」より「質」で結果が出ます。

お母さんのおなかにいる胎児(妊娠5か月頃)は、700万個の卵子を持っているとされています。その後、生まれたときには200万個、思春期になる頃には40万個にまで減少するといわれます。生まれてきてから、新たに卵子が作られることも、数が増えていくこともありません。

卵子は排卵後24時間程度、精子は女性の体内で約48時間程度受精能力があるとされていますので、自然妊娠のタイミングは、月経周期28日の女性なら、周期12日目(月経開始日を1日目とする)から15日目の期間が一般的とされます。
漢方薬の役割は、直接卵子に働きかけて質を良くするということではなく、本来ならもっと元気な卵子を生み出す力を持っているはずの体が、何らかの事情により、良い状態で排卵を迎えることができなくなっている場合に、その事情を解消するお手伝いをしようというものです。
たとえば、精神的なストレスが重なり、無排卵となっているなら、気のめぐりを整える漢方薬を服用することでストレスによる影響を和らげることができますし、体外受精の際の採卵などでホルモン刺激や排卵誘発剤などにより卵巣が疲れているなら、ただ採卵を休むだけでなくホルモン活動のもとになる腎精を養うために漢方薬を活用すると効率良く卵巣の体力を回復することが期待できます。
ただし、漢方薬は、今の体の力をきちんと発揮できるように「低下した状態を補う」ことはできますが、寿命として衰退した細胞や代謝をよみがえらせることはできません。

「卵子の老化」というキーワードに、焦りが大きくなっていませんか︖

「卵子の老化」についてのひとつの医学的指標としてAMH(抗ミュラー管ホルモン)検査があります。 「卵巣年齢の目安」などと言われますが、AMH の数値は卵巣内にどのくらいの卵の数が残っているか(卵巣予備能力)を反映するため、不妊治療選択の目安や閉経年齢の予測などに使用されているものです。AMH が低い場合は、卵巣内に残っている卵の数が少なく、自然排卵が起こりにくいだけでなく、不妊治療の際に使用される排卵誘発剤に反応しにくいといわれます。これまで卵巣予備能力の評価に使用されていたFSH(卵巣刺激ホルモン)に比べてAMH は月経周期による影響を受けないため、いつでも血液検査で測定が可能なものです。

不妊治療では、AMH が低いと、卵が残っている間に少しでも早くそれを確保し、体外受精で妊娠を目指そう、となるのですが、AMH の値=卵子の質ではないのです。つまり、AMH が低くても卵子は劣化していないケースも考えられるのです。
妊娠を目指す人にとって、必要なのは「残りの卵の数」よりも、「欲しい子どもの数だけの良質の卵子」ではないでしょうか。 ですから、AMH の低い場合は、ひとつひとつの卵子をより大切にしなければならない、と考えます。良質の卵子を育むには、母体となる女性の体を大切にし、その力を養う必要があると考えて、漢方では、女性の体調を整えていくのです。

精子と男性不妊について

男性側に不妊原因があるケースは、女性側と同率と言われています。

近年、男性不妊の割合は増加している傾向が強いようです。
男性は、まずは積極的に精液検査を受けて現状チェックをするのが第一歩です。そして、何か問題が見つかった場合は、病院で治療が必要な場合(男性不妊症)と効果的な治療法がない場合(不妊状態の体調的問題)に区別して「妊娠させる力」を高めるための体質改善を始めましょう。女性の「妊娠できる力」と男性の「妊娠させる力」の両方が今よりも高まれば、カップルの「妊娠力」自体を高めることにつながります。

男性不妊の原因としては、

  1. 精子の問題(無精子症・乏精子症)
  2. 精巣の問題(精索静脈瘤)
  3. セックスレスの問題(ED や射精障害)

などが挙げられますが、この中で西洋医学的な(病院での手術など)治療が効果的なのは精巣静脈瘤です。これは、男性不妊40%程度に見られるという最も明確な不妊原因といえるものです。 また、近年注目されるのがED で、患者数は推定約900 万人、男性不妊原因の約20%が該当するといわれています。

漢方的に男性不妊を考えるときに最も重要視するのは、日常の生活リズムや食事、肉体的疲労度合や精神的ストレスの程度、その他以前からの体質(下痢しやすい、冷え性、アレルギー等)などによる「今の体調」です。
つまり、その人の健康状態や体調を反映するのが、その人の子孫となる「精子」に他ならないからです。
それ以外にも薬剤の副作用(一部の高血圧の薬や抗うつ剤等)などにより体の機能を調整されている場合も不妊状態に陥る場合もあります。 精液検査は、一回のみではなく、複数回の結果から確認することも大切なポイントです。
ちなみに、精液検査の正常値は以下のように示されています。

■精液検査の正常値(自然妊娠が可能な下限)

■ 精液量… 1.5ml以上
■ 精子濃度… 1500万/ml 以上
■ 総精子数… 3900万以上
■ 運動率… 40%以上
■ 正常形態率… 4%以上(奇形率96%未満)
■ 白血球… 1ml中に100万個未満

※ WHO(世界保健機関)2010 年版より

卵胞ホルモンと黄体ホルモンについて

妊娠におけるホルモンの役割

病院で、不妊原因を調べる際に実施されるものに、ホルモンの検査があります。いわゆる女性ホルモンといわれるのが、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)で、さらに妊娠・出産に関係するものに、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)や卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体化ホルモン(LH)、子宮を収縮させるオキシトシン、乳汁分泌に関係するプロラクチンなどがあげられます。

■妊娠に関わる各ホルモンのはたらき

■ エストロゲン(卵胞ホルモン)… 卵巣から分泌され、子宮内膜を厚くしたり頚管粘液を分泌させたりするなど。排卵促進・乳房や子宮の発達・自律神経のバランスを整えるなどの作用がある。
■ プロゲステロン(黄体ホルモン)… 黄体から分泌され、子宮に働きかけて、子宮内膜の厚さを維持して着床に備え、 妊娠持続に必要なホルモン。妊娠後の胎盤の状態の安定にも作用する。
■ 卵胞刺激ホルモン(FSH)… 脳(下垂体)から分泌され、卵巣に作用し卵胞の成熟を促したり排卵を助けたり する。男性では、睾丸の働きや精子の発育を促進する働きがある。
■ 黄体化ホルモン(LH)… 脳(下垂体)から分泌され、排卵を起こさせたり、プロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌を促したりする。
※卵胞が成熟したときに大量に放出(LH サージ)され、このピークから36~48時間後に排卵する。
■ 性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)… 脳(視床下部)から分泌され、黄体化ホルモン(LH)の分泌を促す働きがある。
■ プロラクチン(乳汁分泌ホルモン)… 脳(下垂体)から分泌され、乳腺の発達や乳汁の分泌促進のためのホルモン。
※高プロラクチン血症は、排卵障害や流産の原因になることもある。

女性ホルモンのバランスが乱れると、排卵が不安定になったり無排卵になったりして不妊の原因となってしまうことが考えられますが、月経不順や子宮筋腫・子宮内膜症の悪化・多嚢胞性卵巣・更年期障害などの病気や体調を崩す原因でもあります。 西洋医学では、直接、足りないホルモンを注射などで補充したり、薬で刺激をして分泌を促進したりする治療が行われますが、漢方では、体全体の中で働きが弱い臓器や代謝を妨げる要因となる原因物質を取り除くなどにより、細胞や神経が本来の機能を行える状態に体調を整え、結果として自然に、必要なホルモンが作られ、バランスの良い状態ができてくる、という違いがあります。
漢方は、あるべき本来の体調になるだけのことですから、体に対して無理なく優しく作用するものです。
ホルモンの分泌量は微量でありそのバランスは変動しやすいものでもあります。個人の体質を見極めながら、適切な漢方薬で体調を整えることが大切です。

「AMH(アンチミュラー管ホルモン)」とは

AMH(アンチミュラー管ホルモン)は、いわゆる「卵巣年齢」の指標として注目されています。
卵巣の中に、卵子になれる卵胞がどれくらい残っているかが分かるものです。発育期の卵胞から分泌され、血液検査でわかります。 卵巣機能の低下により上昇するFSH(卵胞刺激ホルモン)も卵巣の予備機能の指標とされますが、周期により変動するため、AMH の方がより正確に卵巣機能を検知できると考えられています。

妊娠はよく種と畑にたとえられるように、良い土壌(子宮内膜)があってこそ種(受精卵)は、育ちます。
お一人おひとり異なる「芽吹きにくくなっている状態」を改善し、子宮や卵巣を妊娠しやすい環境に整えることを目的に、漢方薬をおすすめします。

妊娠は、男女の協力あってこそ実現するものであることから、ご夫婦そろってのご来店も多くみられます。

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