漢方が大切にしたい立秋の考え〜陽から陰へ〜

“立秋を過ぎると、暦の上では秋を迎えます”
時候の挨拶でよく聞かれます。

まだ厳しい暑さは続きますが、漢方では立秋をひとつの節目として、自然界の「陽」が少しずつ落ち着き、「陰」が増していく季節と考えます。
この「陰陽」という考え方は、妊活中の体のバランスを考えるうえでも大切な理論です。

では、妊娠を考える身体にとって、「陽」と「陰」にはどのような役割があるのでしょうか。

妊活における「陽」の役割
漢方でいう「陽」には、身体を温める、動かす、活動させるといった働きがあります。
妊活では、身体の代謝や血流、卵胞の発育、排卵など、身体が動いていくための力を考えるときに「陽」という考え方が関わります。

漢方では、生殖・成長・発育など生命力には「腎」の働きが必要ですが、その「腎」を温め、働かせる力を「腎陽」といいます。
つまり、「陽」には「身体を動かし、温め、生命活動を進める力」という役割があります。

妊活における「陰」の役割
では、「陽」の対極にあたる「陰」はというと、身体を冷やすという意味とは異なり、身体を潤し、養い、内側に蓄える働きを意味します。
漢方では、血や津液(=血液以外の体液)など身体を養うものも陰という概念から捉えます。

妊活では、卵子が育つこと、子宮内膜が整っていくこと、受精卵を迎える環境を養うことなど、「育てる」「養う」という働きを考えるときには、「陰」の考えが必要になります。
つまり、陰には「身体を養い、潤し、育てる力」という役割があります。

陽と陰は、どちらも妊娠に関わる
大切なのは、陽と陰のどちらか一方が優先されるというものではなく、陽があるから身体は動き、陰があるから身体は養われる、という互いに関係しあってバランスを保つことです。

身体を温めて動かす力と、身体を潤して養う力。
この二つが互いに支え合いながら、身体の働きを保っているのです。

漢方では、この陰陽のバランスを、その人の体質や体調と合わせてとらえていきます。
たとえば、冷えや疲れが強く、温める力が不足している方と、ほてりや乾燥が強く、身体を養う力が不足している方では、同じ「妊活」でもアプローチの方向性が異なります。
「妊活にはこれが良い」と一律に考えるのではなく、今のバランスがどのような状態にあるのかを見ることが、大切です。

月経周期にも陰陽のバランスがある
女性の身体では、月経周期も陰陽の考え方で捉えることができます。
月経が終わった後から排卵へ向かう時期は、身体を養う陰が充実していく時期。
排卵を境に陽の働きが高まり、その後は次の月経へ向かって再び陰陽バランスが変化していきます。

現代医学では、ホルモンの変化によって月経周期を捉えるように、漢方では身体全体の変化を陰陽の移り変わりとして捉えていきます。

「温めれば妊娠につながる」とは限らない

妊活では「身体を温めることが大切」という言葉をよく耳にします。
確かに、冷えが強く、陽の働きが不足している場合は、温めることは有効な養生になります。

しかし、ほてりや乾燥、寝汗などが目立ち、陰が不足しているタイプでは、温めることばかりを重視すると身体の状態に合わない場合があります。
一概に、「陽が多いほど良い」「陰が多いほど良い」というものではなく、そのかたにとって、今どのような陰陽バランスにあるのかを見極めることがポイントです。

立秋から意識したい「陽から陰へ」
立秋を過ぎても、気温は高く、夏の生活が続きます。
でも自然界では、少しずつ陽が落ち着き、秋へ向かう変化が始まっています。

夏は日が長く、活動量も増えやすい季節です。
汗をかき、外へ出て、身体を動かし、暑さの中でエネルギーを発散します。

秋になると、少しずつ日が短くなり、自然界も内側へ収まる方向へ向かいます。
自然のなかで生活する上で、季節の変化に合わせて過ごし方を調整していくことが体調の安定につながります。

夏の消耗を、秋に持ち越さない
夏は汗をかく機会が多く、冷房による温度差もあり、睡眠や食欲にも影響が出やすい季節です。
妊活中の方は、仕事や家事に加えて通院や治療の予定もあり、体力や気力を消耗する機会がさらに増えるかもしれません。

立秋を過ぎたら、これまでの生活を少し振り返り、夏の間に使った身体の力を、少しずつ養う時期へと、モード切り替えの準備を始めましょう。
睡眠は十分にとれているか。
食事をきちんと摂れているか。
暑さで体力を消耗していないか。
夜まで活動が続いていないか。

「陽を使う」妊活から「陰を養う」妊活へ
妊活では、治療や検査、運動、食事改善など、「行動すること」に意識が向きやすくなります。
もちろん、必要な行動に取り組むことは大切です。

でも忘れてはならないのは、同時に、身体には「休み、養う」という「陰」の働きを支える養生も必要だということです。
睡眠をとる。
食事から必要な栄養を摂る。
冷たい飲食に偏らない。
疲れを感じたら活動量を調整する。
夜は少しずつ静かな時間へ切り替える。

妊活にも季節に合わせた養生を
「陽から陰へ」という言葉は、妊活を休むという意味ではなく、身体を養い、活動へつなげるための充電という大切な仕組みです。

夏に活動して消耗した身体を、秋に向けて整えていく。
立秋を過ぎた今からは、夏の勢いのまま頑張り続けるより、少しずつ生活の勢いを和らげ、身体の内側へ意識を向けてのいきたい時期です。
季節に合わせて体調を整えることも、妊娠に向けての体づくりに含まれるのです。

一陽館薬局では、お一人おひとりの体質や日々のご様子を丁寧に伺いながら、漢方の知恵にもとづく妊活をご提案しています。
今、何が必要なのか、一緒に整理していきましょう。

漢方薬・生薬認定薬剤師 樫谷陽子

妊娠への体づくりに近道はないかもしれません。
でもあなたにとっての最短ルートはあるはずです。

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