夏にFSHが高くなるのはなぜ?
暑い時期の採卵周期では「いつもよりFSHが高かった。」という声が聞かれることがあります。
FSH(卵胞刺激ホルモン)は、卵巣で卵胞を発育させるために、脳下垂体から分泌される重要なホルモンです。
特に月経開始後の卵胞期では、FSHの刺激によって複数の卵胞が発育を始め、その中から優位卵胞が選択されていきます。
卵胞が育ってエストラジオールの分泌が増えると、その情報が視床下部・下垂体へ戻り、FSH分泌は抑制される仕組みです。
つまりFSHは、当然、卵巣だけで決まる数字ではなく、視床下部、下垂体、卵巣が連携する「視床下部―下垂体―卵巣系」の中で変動しています。
では、夏の暑さはこのシステムに影響するかどうかについて医学的な問題とは別で、漢方的視点からご案内します。
漢方では、夏の暑さを「暑邪」ととらえます
「暑邪」の特徴は、まず、暑さ(=熱)による消耗が挙げられます。
汗が多くなり、身体の津液を消耗し、さらに、暑さが長引けば気も消耗し、バランスは「気陰両虚」に傾きます。
さらに睡眠不足や精神的緊張が重なると、「夏バテ」とは違う臓腑機能の偏りが生じてきます。
その代表的なものとして「肝熱」があげられます。
「肝熱」とは:暑さと緊張が重なるとき
漢方における「肝」は、疏泄を主り、気機の調節と関係する臓腑として考えます。
妊活中は、身体的な負担だけでなく精神面でも一定の緊張が重なりやすいものです。
採卵の結果。
AMHやFSHの数値。
次の治療周期。
排卵のタイミング。
など、常に考えている状態が続くと、気の疏泄が失調し、気滞から化熱するという病機をたどることがあります。
これが肝鬱化火、あるいは肝火上炎といった「肝の熱」の考え方につながります。
肝熱が強い場合には、イライラ、怒りっぽさ、頭痛、目の充血、口苦、胸脇部の張り、月経前の緊張感など、熱と気滞が組み合わさった所見がみられます。
ただし、ここで注意しなくてはならないのは、「熱があるから冷やす」という対応ではないことです。
肝鬱が先にあるのか。
熱が主体なのか。
血の不足が根底にあるのか。
陰液の不足から虚熱を生じているのか。
同じ「熱感」でも、病機が違えば漢方のとらえ方も変わります。
心熱とは:睡眠と精神活動から考える夏
もう一つ、夏の妊活で重要なのが「心熱」です。
漢方における「心(しん)」は、血脈を主るとともに、神を蔵する臓腑としてとらえ、循環だけではなく、精神活動や睡眠とも深く関係します。
夏の夜、暑くて眠れない。
眠りが浅い。
夜になっても頭が冴えている。
妊活のことを考え始めると眠れなくなる。
このような状態が続くと、十分に休息できなくなってしまいます。
漢方では、心火亢盛や心陰虚による虚熱など、心に関係する熱の病機を区別して考えます。
顔が赤い、口舌に熱感がある、落ち着かない、動悸、眠りが浅いなど、熱の所見とともに精神・睡眠の状態も要チェックです。
熱が実なのか虚なのか。
陰血が不足しているのか。
肝火が心神に影響しているのか。
脾胃の弱りを背景にしているのか。
など、丁寧に身体全体の病機を組み立てていきます。
「肝熱があるからFSHが上がる」
「心熱があるからFSHが高くなる」
という直接的な医学的因果関係は確認されていません。
しかし、暑邪、気津の消耗、肝の疏泄、心神の状態などのバランスの偏りが、卵巣予備能や卵胞発育に関係するFSH値に現れることがあります。
夏になってから眠りが浅くなった?
汗をかく量が増えた?
食欲が落ちた?
疲労が翌日まで残るの?
イライラや緊張が強くなった?
口渇やほてりは?
月経前に胸や脇が張る?
様々な体調をヒントに「暑さによる消耗なのか」「肝鬱化火なのか」「心陰の不足なのか」「気血の不足が背景にあるのか」など、漢方的な病機を考えていきます。
お一人おひとりの体質に合わせて、夏の妊活にお役立てください。




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