本虚標実とは?~妊活で知っておきたい漢方の体質~
漢方では同じような症状でも、不調の要因をお一人おひとり見分けて適切な対処をご案内することが特徴的です。
この見立てが違うと、期待した効用を十分に得ることができないのです。
今回は、より効果的に活用するための漢方の考え方についてご紹介します。
漢方には、病態を「本」と「標」に分けて考える方法があります。
その代表的な考え方が、本虚標実(ほんきょひょうじつ)です。
「本」は、その人の身体の根本にある不足。
「標」は、その不足を背景に現れている表面的な滞りや症状。
つまり本虚標実とは、身体の根本には「虚」がありながら、表面には「実」の症状が現れている状態をあらわします。
「虚」と「実」が同時に存在する
妊活では、この考え方がとても重要になります。
たとえば、
気血が不足して疲れやすい。
↓
それなのに、生理痛が強く、経血に血塊が混じる。
一見すると、「血が足りない=血虚」と、「血が滞っている=瘀血」という相反する状態に見えますが、漢方では、矛盾として扱いません。
→血虚や気虚が「本」にあり、その結果として血の巡りが悪くなり、瘀血という「標」が生じている。
という「本虚標実」の一つの”形”です。
同じように、腎虚や気血不足を「本」に持ちながら、気滞や瘀血、痰湿などが表面に現れることもあります。
妊活では「瘀血だけ」を追わない
妊活でよくあるのが、生理痛や血塊を見て、「瘀血があるから、活血化瘀をすればよい」というパターンです。
これを「本虚標実」で考えると、瘀血は「結果として現れているもの」という可能性があります。
例えば、
脾気虚によって食事から十分に気血を生み出せない。
↓
血虚となり、身体を養う血が不足する。
↓
さらに気虚によって血を推動する力も弱くなる。
↓
その結果、血行が滞り、瘀血が生じる。
この場合、瘀血だけを動かそうとしても、根本にある脾気虚・血虚への対応が抜けたままです。
漢方では、
補気・健脾・養血を軸にしながら、必要に応じて活血化瘀を組み合わせる。
というように、本と標を同時に見ながら治法を組み立てます。
「腎虚なのに、熱がこもる」こともある
本虚標実は、瘀血だけに限った考え方ではなく、とくに妊活で問題になるのが「腎虚」についてです。
加齢、過労、睡眠不足、産後の消耗などにより、腎が不足していても、表面には肝気鬱結による気滞や、鬱熱、瘀血などが現れることがあります。
つまり、
「虚しているから、全部が弱い」とは限らず、根本には不足がありながら、その結果として一部に余分なものが滞る状態があるのです。
「不足しているのに、滞っている」という一見矛盾した状態を見分けていくことが対症療法とは異なる点です。
妊活で大切なのは「本」を見失わないこと
妊活では、目の前の症状が気になり、なんとかして改善したくなることも多いと思います。
冷え性、生理痛、月経血量の過不足、基礎体温の乱れ、疲労など、不調とつながっている根底に目を向けると、複数の症状が一つの病機につながっていることがあります。
一陽館薬局では、目立っている症状だけを追うのではなく、その症状を生み出している身体の状態まで遡ることを通じて「本虚標実」を妊活に活かしています。
漢方薬・生薬認定薬剤師 樫谷陽子
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