原因不明不妊に漢方でできること
“妊娠できない原因がわからない”と言われたら、「不妊の原因がなくてよかった」というより、「かえって不安になる」と言われる方が多いのではないでしょうか。
いわゆる原因不明不妊とは、「原因がない」のではなく、「現在の検査では説明しきれない」という状態を意味するのだと考えるべきかもしれません。
「検査では異常は見つかりませんでした。」
漢方相談では、このようなお話から始まるケースもたくさんお受けしています。
排卵は確認できる。
卵管の通過性にも問題はない。
子宮にも大きな異常は認められず、精液検査も基準値内。
・・・それでも妊娠に至らず、「原因不明不妊」と説明を受けることがあります。
これは、「原因が存在しない」という意味ではなく、現在の医療で行われている検査だけでは、妊娠に至らない理由を十分に説明できない状態を示しています。
この「説明しきれない部分」に目を向けることが、漢方の役割の一つです。
「原因不明」という言葉で示される範囲
漢方では、病名よりも「お体は今、どのような状態にあるのか」をとらえていきます。
「原因不明不妊」だからこそ、体質の違いによるところが大きいのだと思います。
月経周期や経血の状態、基礎体温の変化、冷え、疲労感、睡眠、食欲、便通などを確認すると、お一人おひとり異なる特徴が見受けられます。
このような体が発信する様々な情報をキャッチし、その方の体全体のバランスを判別することを「証(しょう)」といいます。
漢方では、この証に基づいて治療方針が組み立てられてきました。
検査値だけでは見えない情報
妊娠に関わる検査は、とても重要ですが、検査だけでは捉えにくい要素もあります。
例えば、基礎体温が高温期へ移行するまでに時間がかかる方、月経血に塊がみられる方、生理痛が強い方、疲れやすく食欲が低下している方、冷えとのぼせを同時に感じる方。
これらは病名には結びつかなくても、漢方では体質を考える重要な手がかりになります。
一つの症状だけを見るのではなく、個々の症状がどのようにつながっているのかを考えることが、漢方の特徴です。
妊娠する力は、体全体の調和による
漢方では、生殖機能は「腎」が中心となり、「脾」と「肝」が支えると考えます。
腎は成長や生殖と深く関わり、脾は食事から気血を生み出し、肝は気血を円滑に巡らせる働きを担います。
例えば、疲労が続いて脾の働きが低下すると、気血を十分に養えず、月経や基礎体温に影響が及ぶことがあります。
精神的な緊張が続くと、肝の働きが滞り、気血の巡りにも偏りが生じます。
さらに加齢に伴う腎の変化も加わることで、生殖機能全体へ影響が及ぶと漢方では考えます。
つまり、妊娠を支えるためには、卵巣や子宮だけではなく、全身が調和して働くことが大切なのです。
同じ診断名でも、必要とされることは異なります
長年、不妊相談をお受けする中で、原因不明不妊という診断を受けた方を数多く診てきました。
その経験から実感するのは、同じ診断名でも体質は実にさまざまだということです。
基礎体温表の推移、月経周期、経血の色や量、舌の状態、脈、お腹の状態まで確認すると、気虚を主体とする方もいれば、瘀血や気滞、腎虚、痰湿を中心に考えるケースもあります。
そのため、一つの診断名に対して一つの漢方薬を選ぶわけではなく、あくまでも体質に応じて柔軟にカスタマイズしていきます。
まとめ
原因不明不妊とは、「原因がない」という意味ではなく、現在の検査では説明しきれない状態を表す診断名です。
漢方は、その説明しきれない部分を体質という方向から捉えるものです。
基礎体温、月経、睡眠、食欲、疲労感、冷えなど、一つひとつの情報を頼りに、お話ぶり、声のトーン、表情、舌の性状など、その方だけの”今”が映し出されています。
一陽館薬局では、それらを総合的に評価し、漢方の理論に基づいて体づくりの道すじを組み立てています。
原因不明という言葉で立ち止まるのではなく、体質という点から妊活を見つめ直すことが、新たな一歩につながると私たちは考えています。
漢方薬・生薬認定薬剤師 樫谷陽子
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