FSH値と排卵不安に漢方でできること

卵胞の発育を見守る中で、
「FSHが高くなっているので・・」
と言われたご経験のあるかたもいらっしゃると思います。

「もう卵子が育たないのでは?」
「自然妊娠は難しいのでは?」
「採卵しても良い結果につながらないのでは?」
不妊治療の検査でこのように説明を受け、不安なお気持ちでご相談に来られる方は少なくありません。

不妊治療を受けていても、各種ホルモン動態まで理解するのは難しいこともあって、見通しの立たない不気味さを感じられるのも当然のことかと思います。

今回は、生殖内分泌学と漢方医学の両方の観点から、FSHと排卵の関係、そして漢方でできる体づくりについてご案内できればと思います。

FSHとは
FSH(卵胞刺激ホルモン)は、脳下垂体前葉から分泌されるホルモンで、卵巣の卵胞を発育させる重要な役割を担っています。
月経初期にはFSHの刺激によって卵胞が育ち、それに伴って顆粒膜細胞からエストラジオール(E2)やインヒビンBが分泌されます。
これらは、脳へ「卵巣が十分に反応している」という情報を伝え、FSH分泌を抑制するブレーキ=「ネガティブフィードバック」が働きます。

ところが、卵巣予備能が低下するとE2やインヒビンBの分泌が少なくなり、脳は卵巣をさらに刺激しようとしてFSH分泌を増やします。

つまり、FSH高値は卵巣機能を補おうとする体の反応であり、原因ではなく結果として現れている指標となるものです。

FSHが高いと排卵できないとはかぎりませんが、
* 卵胞期が短くなる
* 排卵が早まる
* 排卵誘発剤への反応が弱くなる
* 採卵数が少なくなる
といった傾向がみられることもあります。

漢方では「卵巣が働きやすい体」を目指します
医学的に「卵子の数が増えることはない」という現実の中で、
漢方では、妊娠に向けた体づくりを大切にしています。
* 卵胞が成熟しやすい環境を整えること
* 卵巣や子宮への血流や栄養状態を整えること
* 自律神経や内分泌機能を支えること

腎(じん)
「腎は精を蔵し、生殖を主る」と考えます。

腎の働きが低下すると、
* 月経量が減る
* 卵胞の発育が弱くなる
* 排卵力が低下する
など生殖活動の弱りがみられることがあります。

そのため、「補腎」は妊活漢方における体質補強の基本です。

肝(かん)
肝は血を蓄え、気血の巡りを調節すると考えます

ストレスや緊張が続くと肝の働きが乱れ、排卵周期や月経周期にも影響が及ぶことがあります。

また、「肝腎同源」という考え方から、腎を補いながら肝を整えることも重要です。

脾(ひ)
脾は食べたものから気血を生み出す働きを担います。

胃腸機能が低下すると、十分な栄養を利用しにくくなり、血虚や気虚の要因にもなります。

一陽館薬局の妊活漢方では「腎・肝・脾」の三つの働きを整えることを大切にしています。

ご相談でよくあるケース
「FSHが20mIU/mLを超えているため、卵胞の発育が進まないと言われました。」
というご相談を受けることがあります。
このようなご相談は、体外受精で採卵へ向かわれる状況が多いのですが、卵胞の発育が不安定である以外にも
* 経血量が年々減ってきた
* おりものが確認できない
* ほてり感やのぼせ感が強く、顔や頭から大量の汗が出る
* イライラして落ち着かない
* 胃腸が弱く疲れやすい
などを感じられていることもがあります。
このような場合には、以前とは違う「体質」の変化をチェックしながら漢方薬を選択します。

体調が整ってくるにつれて、基礎体温が安定したり、経血量や体調に良い変化がみられたりする方もあり、その後に自然妊娠や不妊治療での妊娠に至るケースも経験しています。
もちろん、年齢や卵巣予備能、不妊の原因、治療内容などさまざまな要因が関わるため、すべての方に同じ結果が得られるわけではありません。

「FSHが20を超えたから妊娠はできない」と結論づけることはできませんが、少し足元を確かめながら進まねばならない位置に立っておられると考えられます。

一陽館薬局では、検査データと体質の両方を丁寧に確認し、その方に合った漢方をご提案しています。

まとめ

FSH値は卵巣の状態を知るための大切な指標の一つです。

現代医学では複数の検査結果を総合的に評価し、
漢方では腎・肝・脾の働きや気血のバランスを整えながら、
生殖機能を支える体づくりを目指します。

検査結果だけにとらわれず、ご自身の体質や生活習慣まで含めて整えていくことが、将来の妊娠へ向けた大切な足固めになります。

漢方薬・生薬認定薬剤師 樫谷陽子

妊娠への体づくりに近道はないかもしれません。
でもあなたにとっての最短ルートはあるはずです。

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