胚を増やせば妊娠しやすい?
ようやく胚移植へ進むことができます···
と言われるお客さま。
採体外受精でなかなか結果が出ず、採卵を繰り返すうちにどんどん卵子の獲得が困難になり、どうしたものか、と困り果ててご相談いただいてからもうすぐ1年になります。
漢方を始められた当初は、焦りから採卵と漢方の併用で取り組まれました。
しかし、私からのご提案は厳しい表現ですが、「空振りの治療では意味がない」というものでした。
どれほどホルモン刺激を加えても、皮膚が変わってしまうくらい自己注射を重ねても、疲弊しきった卵巣に鞭打ったところで、1個も確保できない状態が続けば、その時間も自己投資も費用もすべて水の泡です。
ならば、治療を生かせる卵巣を取り戻すことを考えるしかありません。
鞭打って負荷を増幅する方法とは真逆の考えを持つべきかもしれません。
思い切って治療を半年間お休みされてから、自然周期で採卵に向かわれました。
1個獲得されても、治療方針は2個移植らしく、”あと1個”が本当に遠く感じられた期間でした。
長い期間を待ってでも、その間に採卵を繰り返し2個を目ざすのが、結果的にどうなるのかは私にはわかりませんが、やっとの”2個”は、一回の移植で使われるのです。
「胚を2個戻した方が妊娠しやすいのでは?」と考える方もいらっしゃいます。
実際に、1回の胚移植あたりの妊娠率だけを見ると、胚を2個移植した方が高くなることが知られています。
そのため、「胚を増やせば妊娠率も上がる」という考え方には一定の根拠があります。
しかし、妊娠率が上がる理由は、「子宮の状態が良くなったから」ではなく、「着床できるチャンスを同時に増やしたから」です。
たとえば、若くて良好な胚盤胞が得られている方では、もともと1個の胚でも十分に高い妊娠率が期待できます。
そのため、2個移植によって得られる上乗せ効果は比較的限定的である一方、双胎妊娠のリスクは大きく増加することとなります。
現在、単一胚移植が主流となっている理由としては、この安全性の問題があるといわれます。
また、40歳以上になると「2個戻した方が有利」と考えられがちですが、研究では必ずしも明確な優位性は示されていません。
年齢とともに胚の染色体異常率が上昇するため、数を増やしても結果につながらない場合があるからです。
さらに、良好な胚を何度移植しても着床しない場合は、胚の数だけの問題ではない可能性があります。
子宮内膜の状態、慢性的な炎症、血流、ホルモンバランスなど、胚を”受け入れる側”の条件が影響していることも考えられます。
漢方相談でも、「良い胚なのに結果が出ない」というご相談は多く、そのような場合には、胚を増やすことだけを考えるのではなく、子宮内環境や全身状態を見直すことが大切になるのではないでしょうか。
妊娠は、良い胚と良い環境がそろって初めて成立します。
何個移植するかも大切かもしれませんが、それ以上に「移植した胚が力を発揮できる体になっているか」を考えることが、妊娠への近道になることもあるのではないでしょうか。




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