排卵が遅れる・・・「多嚢胞性卵巣症候群」にも漢方は有効ですか?
排卵が遅れる、排卵日が分かりづらい等、排卵のトラブルの要因として多いものに「多嚢胞性卵巣症候群」(=PCOS)があります。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、卵巣機能が乱れ排卵がスムーズに起こらなくなるもので、卵胞が育つが排卵できない状態になるため、月経不順や無月経、排卵障害などの原因となることがあります。
「多嚢胞」とは、卵巣内に多数の小さな卵胞が溜まった状態を指します。
通常、女性の卵巣では毎月いくつかの卵胞が成長し、その中の1つが成熟して排卵されますが、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の場合、このプロセスがスムーズに進まず、卵胞の発育が途中で滞り、小さな卵胞が卵巣に多数残ってしまうのです。
医学的には、超音波検査で「ネックレスのように並んだ小さな卵胞(直径2〜9mm程度の未成熟な卵胞が多数存在)」が特徴的で、生殖年齢の女性の5~10%がこの症状を抱えているとされ、不妊の原因のひとつと考えられています。
PCOSでは、卵巣に小さな未成熟の卵胞が多数溜まり、排卵が起こりにくくなり、生理周期が35日〜数ヶ月以上になったり、時には無月経の状態になることもあります。
また、男性ホルモンの影響で体毛が濃くなったり、脂性肌やニキビが増えたりすることもあります。
西洋医学では、血液検査で男性ホルモンの値を確認し、超音波検査で卵巣の状態を調べることで診断されます。
もう1つ、PCOSの特徴として「インスリン抵抗性」が挙げられます。
インスリンの働きが鈍くなることで、血糖値をコントロールするために体が過剰にインスリンを分泌します。
これがアンドロゲン(男性ホルモン)の増加につながり、排卵障害を引き起こすことになるのです。
また、黄体形成ホルモン(LH)が過剰になり、卵胞の成長が途中で止まってしまうこともあります。
漢方の視点から改善するにはどうすればいいのでしょうか。
漢方では、PCOSは「瘀血(おけつ)」や「痰湿(たんしつ)」、そして「腎虚(じんきょ)」といった体質的な問題が関係していると考えます。
「瘀血」では血の巡りが悪くなることで必要な栄養やホルモンが卵巣に届かず卵巣の働きが低下し、卵胞が成熟しにくくなります。
食生活の乱れやストレスによって「痰湿」が溜まると、体内の余分な水分や老廃物が排出されにくくなり、老廃物が体内に溜まりホルモンバランスが崩れ、卵胞の発育を妨げる要因になります。
また、生殖の根本的なエネルギーを担う腎の働きが不足すると「腎虚」となり、生殖能力が低下し卵巣機能が十分に発揮されず、ホルモン分泌や卵子の発育も弱ってしまいます。
PCOSでは、糖尿病との関連も注意する点です。
インスリン抵抗性が原因で血糖コントロールがうまくいかず、体重も増加しやすく、メタボリックシンドロームのリスクも高くなると考えられています。
漢方では、PCOSと糖尿病は「痰湿」と「脾虚(ひきょ)」に注目し体質を改善していきます。
脾=胃腸の働きが弱いと、食べたものを効率よくエネルギーに変えることができず、糖や脂肪が体内に蓄積されやすくなるため血糖値も上がりやすく、糖尿病のリスクとなってしまいます。
「痰湿」が多いと代謝が低下し、脂肪が燃焼しにくくなるため、肥満やむくみの原因にもなります。
食事や運動など気をつけていても、生活環境や長年の積み重ねによる体質は、漢方を始めたからといってすぐに変わるものではないかもしれませんが、過去の状態をこれから少しずつでも変えていこうという意識を持つことで漢方の効き目もパワーアップしてくるものです。
特に漢方は「気」の状態は効果を左右する重要な要素ですから、気のめぐりが順調で、気力が充実していると、心が安定するばかりか身体も好ましい方へと進み始めるものです。
それは、お客さまご自身の目線が好ましい方向を見ようとすることでもあるといえます。
一陽館薬局では、多嚢胞性卵巣(PCOS)に対して、漢方的観点から「腎虚」「瘀血」「痰湿」と「脾虚」の改善に有用性の高い漢方処方をご提案してまいります。
症状や状況、不妊治療との兼ね合い、生活養生などお一人おひとりに必要なことは異なりますので、ぜひご納得がいくまでご相談いただき安心して目線を前に向けて妊娠まで一緒に考え寄り添います。
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