子宝漢方相談~低AMHと卵巣嚢腫について~
不妊治療を受けようと病院へ行き、検査を受けたところ、「AMHが低い」と指摘されたというご相談は珍しくありません。
「AMHが低い」ことにより、体外受精を急ぐよう提示されたケースもあれば、急展開で体外受精を始められたケースもあります。
AMHが低くなった理由は一つとはかぎりませんが、今回は「卵巣嚢腫、卵巣チョコレート嚢胞」の手術の既往がある場合についてご紹介したいと思います。
少し話がそれますが、そもそも卵子は卵胞の中に存在しており卵胞が成熟して排卵を迎えます。
「卵胞の一生」は、「原始卵胞」という卵子のもととなる細胞から始まります。
原始卵胞は、女性が生まれたときに卵巣内に約100万~200万個存在しており、思春期を迎えるころには約30万個にまで減少します。
毎月、数十個の卵胞が競り合い、そのうち1つだけが成熟して排卵されますが、最終的に排卵を迎えるに至らなかった卵胞は「萎縮卵胞」として自然に消失するようです。
卵巣嚢腫とは、卵巣に液体や固形物が溜まった「嚢胞(のうほう)」ができる病気です。
多くは良性ですが、大きくなると痛みや圧迫感が生じることもあります。
妊活でよく問題となるのは「卵巣チョコレート嚢胞」で子宮内膜症によって卵巣内に血液が溜まるもので、子宮内膜症も関与しているため根本的に子宮内膜症体質そのものを改善することが漢方での目的となります。
症状も、下腹部痛や圧迫感、月経不順、排便や排尿時の違和感など子宮内膜症と同様です。
AMH(抗ミュラー管ホルモン)は、卵巣内の卵胞数を反映する指標で、卵巣予備能を示しているとされ、値が低いと、卵巣内に残っている卵胞が少なく、自然妊娠が難しくなる可能性が高まると認識されています。
●AMHの基準値(ng/mL)
高値:4.0以上(多嚢胞性卵巣症候群の可能性)
正常値:1.0~4.0
低値:0.1~1.0
極低値:0.1未満
卵巣嚢腫と低AMHの関係性について、問題になるのは、卵巣嚢腫があると、その部分が卵巣機能に影響を与え、AMHが低下することがあります。
特に、チョコレート嚢胞や卵巣腫瘍では正常な卵胞が圧迫され、卵巣予備能が低下しやすくなります。
また、卵巣嚢腫の摘出手術では、腫瘍だけでなく健康な卵巣組織も一部切除されたり損傷を受けたりすることがあります。AMHは卵巣の中にある小さな未成熟卵胞から分泌されるため、正常組織が失われることで卵胞数が減り、AMHの低下につながるのです。
特に術後の癒着が原因で卵巣周囲の血流が滞ると、卵巣機能が低下し、卵胞がうまく育たず萎縮してしまうことがあり。AMH値が下がるリスクがあります。
それと、手術を受けた時点で、すでに卵巣機能が低下しているケースも少なくありません。
卵巣嚢腫が大きく長期間存在すると、卵胞が圧迫されて機能不全に陥るため、その影響が残っていることも考えられます。
漢方の考えでは、基本的に卵巣嚢腫や低AMHのケアには、瘀血(おけつ)を解消し、腎虚(じんきょ)を補うことが重要になります。
瘀血の改善としては、ドロドロ血による血流の滞りを改善し血の巡りを良くしていきます。
血虚によって瘀血を生じている場合は、血を養うことで瘀血を改善し、卵巣機能をサポートします。
腎虚の補強は、生殖に必要な精力を養い、体力のもととなるエネルギーを補うことで基礎体力を高めます。
卵巣嚢腫や低AMHへの対策としては、冷えやストレスが要因になることも多く、個々の体質や症状に応じて最適な処方を見つけることが大切です。
一陽館薬局では、心と体のバランスを大切にしながら卵巣機能の回復に適した漢方をご提案しています。
卵巣嚢腫は月経が繰り返されることにより増悪したり、手術をしても再発することがあり、子宮内膜症そのものをしっかり改善していくことが予防にもつながると思います。
スムーズな妊娠や流産をしないためにも、生理痛や生理に血塊がみられる場合は、早めに対策をおすすめします。
漢方は、いつからでも始められます。
不安やお悩みがあれば、ぜひ一度ご相談ください。体質に合わせたケアをご提案いたします。
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