卵巣嚢腫が大きくなるのはなぜ? ~“エストロゲン”シーソー~

『以前から指摘されていた卵巣嚢腫が大きくなっており、6センチを超えたら手術の対応になると言われ、いろいろ気をつけているのにどうしてこのようなことになってしまうのか・・、しかもいったん手術しても再発しやすいとは・・と途方にくれます。』とのお客さま。

卵巣嚢腫は決して一様ではなく、タイプや背景により成長の仕方もさまざまですが、そこに共通して存在するキーワードが“エストロゲン”です。
今回は、なぜ卵巣嚢腫が大きくなるのかを「エストロゲンの働き」から紐解き、体の中で”シーソー” のように起きているホルモンのアップダウンにおけるバランスを考えてみたいと思います。

卵巣嚢腫とは、卵巣にできる袋状の構造で、中に液体や古い血液、脂肪などがたまるものです。
その成長過程は嚢腫の種類によって異なり、たとえば「チョコレート嚢胞」は、子宮内膜に似た組織が卵巣に発生し、月経と同じように出血を繰り返して血液が溜まっていくタイプ。
ほかにも、脂肪や皮脂が含まれる「皮様嚢腫」や、排卵のタイミングが乱れて一時的に大きくなる「機能性嚢胞」などもありますが、どのタイプであっても、共通して「エストロゲンの過剰」が関わっているとされます。

エストロゲン(卵胞ホルモン)は、女性らしさを支える大切なホルモンで、子宮内膜を厚くし、乳腺を発達させ、卵胞を育てるという「育てる力」をもっています。
けれどもその力が過剰だと、本来育つべきでない組織(=嚢腫や筋腫、内膜症など)までも刺激して大きくしてしまうことがあるのです。

とくに「チョコレート嚢胞」では、エストロゲンの影響を受けた内膜様組織が厚くなり、毎月のように出血を繰り返すことで嚢腫が育ち、炎症や癒着を引き起こし、妊娠にも影響が及んでいきます。

ここで重要なのは、単にエストロゲンが多いだけでなく、「バランスの崩れ」が問題となっていることです。

本来、エストロゲンとプロゲステロン(黄体ホルモン)は、月経周期の中でバランスを取り合いながら交互に優位になる「シーソー」のような関係です。
卵胞期にはエストロゲンが、排卵後にはプロゲステロンが優位になり、体内環境を調整しています。

しかし、現代女性にはこのシーソーが大きく傾き「エストロゲン優位(プロゲステロンの相対的不足)」になっている方が多くなっており、その背景についてご案内したいと思います。

エストロゲンが高くなる理由として、まず第一に挙げられるのは、黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌不足です。
排卵がスムーズに起こらなかったり、黄体の力が弱かったりすると、自然とエストロゲンの「抑え役」が不在となり、エストロゲンが暴走してしまいます。
とくに30代後半以降やストレスが多い方には、このような傾向が多く見られます。

また、肝臓の解毒力の低下も大切な要素です。
エストロゲンは体内で使われたあと、通常は肝臓で分解され、便や尿として排出されますが、疲労やアルコール、便秘、加工食品の多い生活によって肝機能が落ちると、エストロゲンが分解されずに体に留まり、過剰な刺激となってしまうのです。

さらには、環境ホルモン(エストロゲン様物質)の影響も見逃せません。
プラスチック容器、農薬、化粧品などに含まれる合成化学物質が、エストロゲンのように細胞を刺激し、ホルモンバランスの乱れを引き起こします。

そして、肥満や体脂肪の増加も、体内でのエストロゲン産生を増やす要因となります。脂肪細胞には、男性ホルモンをエストロゲンに変換する酵素「アロマターゼ」が存在しており、脂肪が多いほどエストロゲンも増えやすくなることが知られています。

漢方的に「育ちすぎる体」(=エストロゲン過剰の状態)を解釈すると、「肝鬱」「痰湿」「瘀血」といった体の”滞り”から説明できます。

「肝鬱」は、ストレスや感情の抑圧により「肝」の気の巡りが悪くなり、ホルモン調整のスイッチが入らないため、排卵障害や月経不順を招きやすくなります。
また、水分代謝が悪くて体に余分な水分や老廃物が溜まると、そこに湿が絡んで「痰湿」となり、嚢腫の材料となっていきます。
さらに、血流が滞る状態(=「瘀血」)があることで、内膜症やチョコレート嚢胞を悪化させる要因となります。

漢方では、これらの状態を整えることで、エストロゲンの過剰な刺激を和らげることを目指します。

このような考えから漢方では、エストロゲンが高いからといって、それを抑える薬だけで解決するものではなく「なぜ高くなっているのか」「なぜ排泄されないのか」「なぜそれが増大しやすいバランスになっているのか」を、カラダ全体から見つめ直すことが重要です。

漢方では、肝・脾・腎という三つの臓腑を調和させながら、「巡る力」「流す力」「排出する力」を回復させていくことで、嚢腫が増悪しにくい体をめざします。

卵巣嚢腫が大きくなるという現象は、決して一夜にして起きるものではありません。
日々の生活習慣、ストレス、体質の積み重ねによって、少しずつシーソーのバランスが傾いていきます。

それを元に戻すには、ただホルモンを操作するだけでなく、代謝が偏りなくスムーズであるかどうか意識しながら生活面でも養生を重ねることが大切だと思います。

一陽館薬局では、妊娠のためにも、よりよいご出産のためにも、生理や日常生活の快適性を高めるためにも、お一人おひとりに合った漢方でホルモンバランスの安定をはかっていきます。
一度病状が進むとなかなか取り戻すことも難しくなります。
お早めにご相談いただきたいと思います。

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