それを「病名漢方」といいます

婦人科の診察室で、こんなご経験はありませんでしたか?
「当帰芍薬散を出しておきますね」

漢方的な問診はなし。
体質の話もなし。
病名に対して、漢方薬の名前が書かれた処方箋が渡されることがあるかもしれません。

この場合は「漢方」ではありません。
「漢方薬を使った西洋医学」です。

処方された薬が化学系薬剤ではなく、漢方薬であるということと、「漢方」とは少し区別したいものです。

病名漢方とは?
病名漢方とは、「この病名にはこの漢方薬」と機械的に当てはめる処方スタイルのことです。
例えば、不妊には当帰芍薬散。生理不順には桂枝茯苓丸。更年期には加味逍遙散・・・といった感じで、婦人科に限ったことではありません。

このような使い方は、西洋医学の「この症状にはこの薬」という思考と構造がまったく同じです。
漢方薬という分類の薬を使っているだけで、漢方の考え方はそこには必要なさそうです。

本来の漢方は、病名を診ません
漢方が2000年以上かけて築いてきた医学体系は、「病気を治す」ではなく「人を診る」ことを根幹にしています。

気・血・水の巡り、五臓の状態、陰陽のバランス、虚実寒熱などをひとつひとつ確認し、その人固有の「証(しょう)」を見極めてはじめて、処方が決まります。

同じ「不妊」でも、冷えが強い人と熱がこもっている人では、正反対の処方になることがあります。
同じ「生理不順」でも、血が足りない人と血が滞っている人では、まったく違う漢方薬が必要になります。

「不妊に効く漢方薬」は存在しません。
「あなたの体質に合った漢方薬」があるだけです。

問題は、混同されていること
「漢方は試しました。でも効果がなくて」
そうおっしゃる方に詳しく聞いてみると、婦人科で処方された当帰芍薬散を数ヶ月以上飲んでいた、というケースも見受けられます。

体質に合わない漢方薬は、効かないだけではありません。
合わない処方を飲み続けることで、体のバランスをかえって崩してしまうこともあります。

「漢方は効かなかった」のではなく、「その漢方薬がその人に合っていなかっただけ」かもしれないという思いが浮かびます。
漢方薬を利用したことはあっても、本来の漢方を利用したことがない、ということでもあります。 

漢方薬と漢方は、別物です
漢方薬はあくまで「道具」です。
その道具を、誰が、どんな根拠で、どのように使うかによって効果に違いが出ます。

漢方専門薬局での相談は、体質を丁寧に見極めることから始まります。
身体面の調子、冷えや熱の状態、精神的なストレスの影響、生活習慣……時間をかけて全体を把握し、その方に合った処方を組み立てます。

「漢方を試した」と思っている方ほど、あらためて一度ご相談いただきたいと思います。

妊娠への体づくりに近道はないかもしれません。
でもあなたにとっての最短ルートはあるはずです。

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