見えない不妊原因をさぐる~精子の老化~
「不妊=女性の問題」とされていたのは過去の話。
現代では、不妊に悩むカップルの約半数に男性側の原因が関与しているとされ、特に「精子の老化」に注目が高まっています。
しかし、精子の問題は外から見えにくく、どうしても軽視されがちな現状もあり、不妊治療においてホルモン療法や医学的処置を女性がまったく受けないという選択肢はまず考えにくいのではないでしょうか。
男性の精子は思春期以降、毎日新しく作られるため、「精子は年齢に関係ない」といわれてきましたが、近年、加齢による酸化ストレスが精子のDNAを傷つけ、受精率の低下や流産リスクの上昇、さらには先天的な疾患リスクの要因になることが明らかになってきました。
つまり「精子も老化する」というわけです。
精子が生まれる精巣の機能そのものが年齢とともに低下すると、いくら「新しく作られている」とはいえ、その質を保つことが難しくなります。
たとえば「精索静脈瘤」は、精巣周辺にうっ血を生じさせ、熱がこもることで精子の質を低下させる代表的な男性不妊の原因疾患であり、精子の老化を促進する要因として多く見られるものでもあります。
さらに、精子の質は日々の暮らしの中で、知らず知らずのうちに影響を受けています。
喫煙、過度の飲酒、睡眠不足、ストレス、熱がこもるような生活習慣などは、精子の運動率や形態、DNAの健全性を損なうリスクがあります。
何気なく続けている習慣が、将来の妊娠に大きな影響を与えているという認識を持つことも大切です。
実際には、男性不妊の診断ではまず「精液検査」が行われますが、基準を下回る原因として、精子をうまく作れない「造精機能障害」、通り道に異常がある「精路通過障害」、EDなどの「性機能障害」、精子自体の受精能力に問題のある「精子機能障害」など、さまざまな視点から診断されることが必要となります。
漢方では、こうした生殖に関わる機能は「腎」の働きに支えられていると考えます。
腎のエネルギー(=腎精)は加齢とともに自然に減少し、「腎虚」と呼ばれる状態になります。
この腎虚は、男性不妊における根本的な体質であるといえます。
腎虚の分類として、「腎陽虚」は、冷えによって精子のエネルギーが不足するタイプで、性欲や運動率の低下が見られます。
一方「腎陰虚」は、過労やストレスなどで体内に熱がこもり、潤いを失って精液の質が下がる状態です。
また、精神的ストレスから「気」の巡りが滞り、血流が悪くなる「気滞血瘀」も、精索静脈瘤などの背景に関係することがあります。
精子は日々の生活習慣で大きく変わるのが特徴です。
スマホをズボンのポケットに入れたり、座り姿勢で股関節付近にパソコンを置いて作業をしたり、長時間の入浴やサウナ、密着する下着の着用などは、精巣の温度を上げることにつながり、精子の生成に悪影響を及ぼします。
喫煙はDNAを傷つけ、アルコールの過剰摂取は造精機能そのものを損ねます。
漢方理論から“老けにくい精子”を育てる土台を整えるには、夜の「陰」が深まる前(0時まで)に眠りにつくことが、ホルモンバランスを維持する点からもおすすめです。
漢方は、表面的には気づきにくい不調や体質を丁寧に捉え、それぞれの体質や症状に応じて処方を選ぶことから「元気な精子づくり」が始まります。
精子が排卵された卵子にたどり着くには、人間スケールで換算すれば約6kmを1時間以内に泳ぎきるほどの道のりを突破することが必要です。
運動率、形態、DNAの質といった条件のすべてが整って初めて、「受精」という「妊娠への最初のステップ」をクリアすることができるのです。
一陽館薬局では、ご夫婦でのご相談をおすすめしております。
妊娠の成立には、お二人そろって”元気”であることが必要だと思います。
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