見えない不妊原因をさぐる〜三つの焦とは〜
漢方では、体の働きを臓腑ごとに分類するだけでなく、それらの機能がどの部位に集まり、どう連携しているかを示す「三焦(さんしょう)」とい概念があります。
これは、体を上焦・中焦・下焦の3つのエリアに分け、それぞれが担う役割を示したものです。
現代医学における臓器の位置とは異なり、体の機能的な区分けという位置づけと考えるものです。
「三焦」は、『黄帝内経』などの古典医学書にも登場する概念で、人体を次の3つに分けています。
◎上焦(じょうしょう):胸から上(肺・心) → 呼吸・気の生成と巡り、水分の霧化と散布
◎中焦(ちゅうしょう):みぞおちからおへそのあたり(脾・胃)
→ 飲食物の消化吸収と気血津液の生成
◎下焦(げしょう):おへそから下(腎・肝・膀胱・腸・生殖器)
→ 排泄、生殖、ホルモン、老化、成長の調整
この三焦は、気血水の流れをスムーズに保つ“経路”ともとらえることができ、体の内なる流れを整える司令塔のような存在です。
三焦の中でも「下焦」は、特に女性の体と深い関わりをもつ重要なエリアで「腎」「肝」「膀胱」「小腸」などの機能が集まり、特に子宮や卵巣といった生殖機能の中心も含まれます。
漢方では、子宮や卵巣のことを「胞宮」という総合的な概念で捉えます。
「胞宮」は、単なる臓器ではなく、気・血・精のバランスによって成り立ち、月経・妊娠・出産・更年期など、女性の一生にわたって影響する生命の場と考えられています。
この胞宮を支えているのが、下焦の働きなのです。
・腎(じん)
→ 生まれ持った生命力(腎精)を蓄え、成長・発育・生殖をつかさどる。排卵や閉経、老化にも関与。
・肝(かん)
→ 血を貯蔵し、全身に巡らせる。
月経周期の調整、PMS、情緒の安定とも深く関わる。
・脾(ひ)
→ 飲食物から気血を生み出し、胞宮に栄養を送る。脾の弱りは、瘀血や冷え、無月経につながることも。
下焦のバランスが崩れると、女性特有の不調が現れやすくなります。
・生理不順・月経痛・無月経
・不妊・着床障害
・子宮筋腫・卵巣嚢腫
・下腹部の冷えやむくみ
・頻尿・尿もれ・便秘・下痢
下焦を整えるには「気・血・水」の流れが滞ることなく、腎や肝、脾が健やかに働くことが、大切です。
そのためには
体を冷やさないこと(特に下半身)
ストレスを溜めないこと
適切な睡眠・栄養・休養をとる
生理周期をよく観察し、乱れを放置しない
といった当たり前のことですが、日々の好ましい習慣が体質改善へとつながります。
「三焦」は、聞きなれない言葉ですが、漢方を選ぶ時は病名や症状だけで判断せず、バランスをみてお客さまにあったものをお選びしています。
同じ駆瘀血剤といっても、妊娠に向けては“下焦“に作用する処方を用いるのが妥当だと一陽館では考えています。
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