肥満男性と精子の質
赤ちゃんの遺伝情報は、男性と女性でそれぞれ半分ずつを担っています。
今回は、世界的にも問題視されている「男性の肥満」と精子の質との関係について考えたいと思います。
体重のことと、精子のことは別問題だと思われるかたもおられるかもしれませんが、医学的にもデータで示されています。
肥満が精子に与える影響について、肥満の男性では、精子の数・運動率・形態(形の正常性)が低下しやすいことが多くの研究で確認されています。
たとえば
・BMI30以上の男性では、正常体重の男性に比べて精子濃度が約20〜40%低下
・運動率も10〜15%低下する傾向
・精子DNAの損傷リスク(DNA fragmentation index)が有意に高まる
などの報告があります。
また、2018年のメタ解析(複数研究を統合した信頼度の高い方法)でも、肥満男性は正常体重の男性に比べ、精液量・濃度・総精子数・運動率のいずれも有意に低いことが示されています。
“精子数は基準以上あるのに…”
“運動率は悪くないのに…”
という場合でも、精子の「質」や「遺伝子の安定性」という点では肥満がストレスとなり影響しているかもしれません。
なぜ、肥満で精子の質が落ちるのか、理由を簡単にまとめます。
●男性ホルモンの低下
脂肪細胞が多いと、男性ホルモン(テストステロン)が減少し、逆にエストロゲンが増えやすくなるため、精巣の働きが弱まりやすくなります。
●精巣の温度上昇
脂肪が増えると身体の熱がこもりやすくなり、精巣の温度が上がることで、精子形成がうまく進まなくなります。
※精子は体温より2〜3℃低い環境で最もよく作られます
●慢性炎症・酸化ストレス
内臓脂肪の増加は炎症物質の産生を高め、精子DNAにダメージを与える「酸化ストレス」が増加します。
このように、肥満はホルモン・温度・炎症という複数の条件から精子の質に悪影響を及ぼします。
男性が減量すれば精子の質は改善するのかについて、研究では、5〜10%の減量だけでも精子濃度・運動率の改善が見られたという報告があります。
また、運動は男性ホルモンを高める効果があるため、ウォーキング・軽い筋トレ・ストレッチなどは有効な対策です。
過度な激しい運動は逆効果になる場合があるので、
無理ない範囲の運動+バランスの良い食事が理想的です。
漢方的にみた肥満傾向の男性における体質的特徴をあげます。
●湿熱(しつねつ):胃腸に熱と湿気がこもるタイプ
●痰湿(たんしつ):水分代謝が滞り、重だるさが出るタイプ
●腎虚(じんきょ):精をつくる力が弱まっている状態
体質に合わせて漢方で整えると、精子の「量・質・遺伝子の安定性」のいずれも改善が期待できます。
体重のコントロールもしやすくなり、一挙両得ですね。
肥満は、生活習慣やストレス、体質の積み重ねで、誰にでも起こりうることです。
ただ、精子は約70〜90日で新しく作り替えられるため、今からの取り組みが3か月後の採卵やタイミングに影響してきます。
体質の傾向はお一人おひとり異なりますので、一陽館薬局では、しっかりお話をうかがった上でダイエット成功と精子力アップをサポートします。
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