着床に適した「温かく、潤いのある子宮環境」とは
受精卵の状態はそんなに悪くないのに着床しない、といった状況が続くと、漠然と”年齢のせい”だけでは納得できず、気持のやり場もなくなってしまうかたもおられるのではないでしょうか。
中には、「年齢のせいで」「卵子の質か良くないから」とすべてを卵子の問題にされる声も聞かれます。
しかし、妊娠するかどうかを気にするなら、卵子の質だけでなく、卵子が育つ子宮環境も同時に整えることを忘れてはならないと思います。
今回は、着床する時期である高温期について漢方的に考えてみます。
漢方では、子宮は「胞宮(ほうきゅう)」とも呼ばれ、腎・脾・肝の調和によって温かく、「血」が巡り、「水」(潤い)を保った状態が理想とされます。
これにより、受精卵が「根を下ろしやすい土壌」となるのです。
高温期は、まさにこの「温煦作用(身体を温め育む力)」が発揮されるべき時期であり、ここが不十分であれば着床が難しいだけでなく、着床したとしても妊娠の維持も困難になると考えられます。
この着床環境を探るひとつのサインが基礎体温に表れます。
漢方では基礎体温はまさに身体からの重要なメッセージとして、体調を確認する大切なツールととらえます。
です。中でも「高温期」は、排卵後に訪れる黄体期であり、受精卵の着床を支える大切な時期です。
西洋医学では、ホルモンバランス、特に黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌が注目されますが、漢方ではこの時期を「腎」「脾」「肝」の三臓の働きの調和と「気・血・水」の巡りのバランスから捉え、着床に適した身体づくりを考えます。
そもそも基礎体温は低温期(卵胞期)と高温期(黄体期)の二相に分かれます。
高温期は排卵後、黄体ホルモンの作用により体温が上昇し、子宮内膜を厚く保ち、受精卵が着床しやすい状態を作ります。
この高温期が安定して持続しない、または温度が低い場合、妊娠の成立が難しくなることがあります。
漢方的にみる高温期の条件として、妊娠の成立には「腎精」「気血」「温煦」の三要素が整っていることが重要とされます。
高温期がしっかり続くためには以下の条件が整っている必要があります。
1. 腎の充実(腎精の充足)
腎は「生命の根本」とされ、生殖機能を司る臓です。腎精が不足すると排卵や黄体機能が低下し、高温期が短く不安定になります。
特に「腎陽」の不足は体を温める力を低下させ、体温上昇が弱くなる原因となります。
症状例:高温期が上がらない、途中で体温が下がる、冷え性、腰や膝のだるさ、疲労感
2. 脾の健全(気血の生成)
脾は飲食物から「気」と「血」を生成し、子宮を養う力の源です。
脾虚により気血が不足すると、子宮内膜が十分に育たず、着床環境が整いません。
さらに気の不足は黄体ホルモンの分泌を支える力も弱くします。
症状例:胃腸が弱い、疲れやすい、めまい、顔色が悪い、経血量が少ない
3. 肝の調整(気の巡りとストレス管理)
肝は「気の流れ」を調整し、情緒やホルモンバランスにも深く関与します。
肝気鬱結があると、ストレスによって高温期中に体温が乱高下したり、黄体機能不全を引き起こすことがあります。
また、肝血は子宮内膜を滋養する役割も持ちます。
症状例:イライラ、不眠、胸脇部の張り、月経前症候群(PMS)
着床は「受精卵の質」だけでなく、「受け入れる側の準備=子宮環境」の影響も大きく受けます。
高温期を安定させることは、その基盤を整える第一歩なのです。
漢方では一人ひとりの体質に応じて「何が足りていないか」「何が滞っているか」を見極め、根本から改善することを目ざします。
一陽館薬局では、心と体の調和を大切にしながら、お一人おひとりの「自然と宿る力」を最大限に発揮できるように漢方でサポートしていきます。
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