気になる男性力〜精子の質と妊娠力〜
不妊原因の約半数に男性因子が関わっていることが明らかになっています。
とはいえ、不妊治療を受けるにしても、どうしても女性主体と感じるのが現実かもしれません。
男性の中にはまだまだ不妊治療は”女性が抱える問題”と、自分は関係ないと思っているかたや、あえて目を背けているご様子も見受けられますが、積極的にご夫婦が協力して解決しようとご相談いただくケースも増えています。
一陽館薬局で漢方は自費であっても、より健康になって、最大限自然な妊娠を望める方法として、むしろ効率が良いとのご理解も高まっていると感じます。
今回は、実は多くのかたが気になっている「男性力」についてご案内したいと思います。
まず「男性力」とは何でしょうか。
単なる検査上の「精子の数」ではなく、卵子と出会ったときに受精・発育へとつながる「妊娠させる力」のことを指すと考えています。
精子の状態を評価するには、濃度・運動率・形態といった基本的な指標に加え、近年は「DNA断片化指数(DFI)」や酸化ストレス度も注目されています。
精子と卵子の「出会い」に必要な力を携えた精子であってこそ妊娠までの複雑なプロセスをクリアできるのだと思います。
ステップ①
子宮頸管を通過できるか(運動力・精子の粘液通過能)
ステップ②
卵管膨大部までたどり着けるか(持続力)
ステップ③
透明帯を貫通し卵子に融合できるか(形態や先体反応)
ステップ④
受精後に健全な胚へ発育できるか(DNA損傷の少なさ)
つまり「男性力」とは、精子の数や形の問題だけでなく、精子そのものが持つ総合的な生命力なのです。
精子力維持・強化には、どのような事を意識すればよいのでしょうか。
◎生活習慣
睡眠不足、飲酒、喫煙、肥満、過度なストレスは精子力を低下させます。
特に酸化ストレスはDNA損傷を引き起こし、受精後の胚発育や着床に影響を与えることが知られています。
◎環境要因
高温環境(サウナ、長時間の入浴、熱を持つノートPCの使用など)は精巣温度を上げ、造精機能に悪影響を及ぼします。
◎加齢
男性も年齢とともに精子の運動率や形態の正常率が低下します。
40代以降ではDNA損傷の割合が増加し、妊娠率や流産率に影響する報告もあります。
漢方では、精子は「腎精」に由来すると考えます。
腎の力が弱まれば精の生成が滞り、精子の数や質に影響が出ます。
また、
・血流が悪い(=瘀血)と精巣への栄養供給が不足する
・体が熱に偏る(陰虚・熱証)と酸化や炎症が強まり精子が傷む
・気が不足(気虚)すると運動率が下がる
といった体質的な背景も、現代医学的なデータと一致する部分があります。
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男性力を高めるためにできること
睡眠の質を確保し、規則正しい生活を送る
過度な飲酒・喫煙・高温環境を避ける
抗酸化作用のある食材(野菜、果物、ナッツ類)を取り入れる
適度な運動で血流を促し、酸化ストレスを軽減する
必要に応じて漢方やサプリで体質改善を行う
「男性力」は単なる精子数ではなく、卵子と出会い、受精し、健全な胚へとつながる力のことです。
現代医学では酸化ストレスやDNA損傷が注目され、東洋医学では腎精や体質のアンバランスが課題とされます。
どちらの視点からも共通するのは、日々の生活習慣や体の状態が精子の質を大きく左右するという事実です。
男性も自分の体を整えることが、妊娠への近道となります。
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