排卵障害と漢方
生理がなかなか来ない、基礎体温がずっと低温のままで変化がないという場合、「もしかして、排卵していないのでは?」と不安になる方も多いのではないでしょうか。
また、婦人科で「排卵障害」と診断され、驚いた方もいらっしゃるかもしれません。
排卵障害は、不妊の原因ともなる見逃せない問題といえます。
今回は、排卵障害の原因と漢方的な視点からの改善方法についてお伝えしたいと思います。
排卵障害とは、卵巣内で卵胞がうまく成長しなかったり、成長しても排卵が起こらない状態を指します。
妊娠は「視床下部―脳下垂体―卵巣(性腺軸)」というホルモンの連携がうまく働くことで成立しますが、このリズムが乱れると排卵障害が発生します。
排卵障害の原因も程度もさまざまで、複数の要因が重なり合っているケースも少なくありません。
排卵は妊娠に直結する問題ですから、原因を見つけて早めに適切な対策を取りましょう。
代表的な排卵障害の原因についてまとめてみたいと思います。
◎卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌低下
卵胞刺激ホルモン(FSH)は、脳下垂体から分泌されるホルモンであり、卵巣内で卵胞を成熟させる役割を担っており、視床下部や脳下垂体の働きが低下すると、FSHの分泌が不足し、卵胞が十分に育たなくなります。
FSH分泌低下の原因としては、極端なダイエットや過度なストレス、脳下垂体や視床下部の機能低下が考えられます。
漢方では、「腎虚」や「気血不足」の状態と捉え、体力や気力を補いホルモンバランスを整える処方で対応します。
◎早発卵巣不全
早発卵巣不全とは、40歳未満で卵巣機能が低下し、月経が完全に停止してしまう状態です。
本来ならまだ生殖能力が保たれている年齢でありながら、閉経と同様のホルモンバランスとなり、妊娠が難しくなります。
原因は明確ではありませんが、自己免疫疾患や遺伝的要因、放射線や抗がん剤の影響が指摘されています。
FSH値も異常に高くなるため、基礎体温は一相性で高温期がみられません。
漢方では、「腎精不足」と捉え、生命エネルギーである「腎」を補い体の根本から活力を取り戻すことを目ざします。
◎高プロラクチン血症
プロラクチンは、本来授乳を促すために分泌されるホルモンですが、出産していないにもかかわらずプロラクチン値が高くなる状態をいいます。
この状態では排卵が抑制され、月経不順や無月経が起こりやすくなります。
原因としては、ストレスや睡眠不足、脳下垂体腫瘍(プロラクチノーマ)などが挙げられます。
基礎体温はギザギザと不安定で、二相性が見られない場合が多いです。
◎多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
PCOSは、卵巣の表面が硬くなり、小さな嚢胞が多数できることで排卵が困難になる病態です。
排卵しにくいことに加え、月経周期も不規則になりやすく、不妊の原因となります。
また、男性ホルモンの分泌が増加することが特徴で、多毛やにきびなどの症状も見られます。
漢方では、代謝を促進し、気血の流れを改善する処方が効果的です。
◎黄体化非破裂卵胞症候群(LUFS)
LUFSは、卵胞が成熟しても破裂せず、卵子が外に出ない状態です。
排卵したように見える基礎体温の二相性が現れても、実際には排卵していないため、見逃されやすい特徴があります。
原因としては、ホルモンバランスの乱れやストレスが関与していると考えられています。
漢方では、卵胞の発育を促すようアプローチします。
◎排卵困難
排卵困難は、黄体化刺激ホルモン(LH)の分泌が不足しているために起こります。
排卵に時間がかかるため、基礎体温の高温期が遅れることが特徴です。
漢方では、気の巡りを整えストレスを和らげることでホルモンバランスを整え、エネルギーを補う処方で対応します。
排卵障害の兆候は月経周期や基礎体温、自覚症状としても現れますので特徴的なパターンについてご紹介します。
まず月経周期についてですが、月経周期が長すぎたり短すぎたりする場合には、卵胞の発育や成熟に問題が生じている可能性が考えられます。
例えば、月経周期が35日以上と長い場合、卵胞が育つのに時間がかかり、排卵までのプロセスが遅れていることが多いです。
一方で、25日以内と短い場合には、卵胞が未成熟のまま排卵が起こっている可能性があり卵子が十分に成長していないため、受精や着床が難しくなります。
また、「高プロラクチン血症」は、脳下垂体から過剰に分泌されるプロラクチンが原因で、排卵を抑制するため、正常な排卵が起こりにくくなります。
基礎体温がギザギザと上下に変動し、0.2度以上のばらつきが見られる場合があります。
排卵が起こるまでに3日以上かかる場合には「排卵困難」といわれ、ホルモンバランスが乱れていることが多く、黄体化刺激ホルモン(LH)が不足していることが原因となるケースも多いようです。
黄体機能が低下していると、黄体ホルモンの分泌不足による「黄体機能不全」といわれる状態となり、高温期が11日未満であったり、高温期と低温期の温度差が少ない傾向がみられ、受精卵が着床しにくくなるため、不妊の原因となります。
排卵障害における自覚症状としては、個人差はありますが、排卵期におりものが少なくなる、乳房が張って痛んだり、理由もなくイライラしたりする、排卵痛がひどい、などがあり、原因に応じてホルモンバランスを整えていくことで症状も軽減され排卵のリズムも安定していきます。
漢方では、排卵障害への対応として「気血の流れの滞り」と「腎虚=生命力や卵胞発育エネルギーの不足」の両面からのアプローチにより整えます。
一陽館薬局では、基礎体温の記録や自覚症状を詳しく伺いながらご相談を進め身体全体のバランスを整えることで自然な排卵を促します。
排卵障害の原因は一つではなく、複数の要因が絡み合っていることが多いためご自身に体に合った漢方を見つけるためには、専門家との相談も重要だと思います。
ストレスケアや生活習慣の改善についても一陽館薬局の漢方相談の得意とするところです。
お客さまとのコミュニケーションを大切にしながら、しっかり寄り添ってまいります。
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