年齢のわりにAMHが低い理由から

体外受精がスムーズに進まない理由として、採卵がうまくいかないということが挙げられます。

今回は、年齢的には余裕があると思われるのに、AMHが低いケースについて考えたいと思います。

Kさん(29歳)は、妊活をはじめて1年ほど経ったころ、婦人科でAMH検査を受けました。
結果は0.8ng/mLで、「卵巣年齢」は40代後半と説明を受けたそうです。

その後、体外受精に踏み切ったものの、3周期連続で採卵がうまくできないという状況が続いていました。

「注射をたくさん打っているのに、卵が育たなくて··」
「どうすればいいかわからなくて··」と、胸がいっぱいの様子です。 
「どうしてこんな結果が出るんでしょう」
と、ご相談をいただきました。

AMH(抗ミュラー管ホルモン)とは、卵巣の中に残っている原始卵胞の数を反映するホルモンです。

「卵巣予備能」とも呼ばれ、採卵できる卵の数の目安として不妊治療の場ではよく使われています。
一般的に、AMHの値が低いほど「残っている卵の数が少ない」と考えられます。

30歳前後の平均的なAMHは、おおよそ2〜4ng/mL程度とされ、Kさんの0.8という数値は、たしかに年齢のわりにかなり低い状態でした。

病院では、婦人科的な異常がない場合には、AMHが低い原因についてとして「体質」や「生まれつき」と説明されるように思います。

でも、私はそれだけではないと感じています。

若いうちからAMHが低い方の共通した状態について、漢方的にご紹介します。

◎「腎(じん)の力」について
漢方では、卵巣や子宮の働きは「腎」に深く関わっています。
腎は、生命エネルギーの根源である「精(せい)」を蓄える臓とされます。
生まれ持った腎の力(先天の精)に加えて、食事・睡眠・ストレスなどの積み重ねが、腎の力を大きく左右します。

若い世代でも、慢性的な疲れ、冷え、夜更かし、過度なダイエット、仕事のストレスが重なると、腎の力が早くに消耗されてしまいます。

◎ 血の不足(血虚)の影響について
卵を育てるためには、十分な血(けつ)が必要です。
漢方でいう「血」は、西洋医学の血液に近い概念ですが、それだけではなく、全身を栄養し、潤す働き全般を指します。

食の細さ、生理量の少なさ、貧血傾向、肌の乾燥・・などが気になる方は、「血虚(けっきょ)」といって血が不足しやすい体質の可能性があります。
血が不足すると、卵巣への栄養も届きにくくなります。

◎ ストレスや気の滞り(気滞)について
妊活中はどうしても気持ちが張り詰めがちです。
「結果を出さなければ」というプレッシャーが続くと、気(き)の流れが滞り、ホルモンバランスにも悪影響を与えます。

Kさんの場合も、もともと真面目で完璧主義なところがあり、「採卵できなかった」という事実がさらに心の重荷になっていました。

3周期連続で採卵できなかった理由を一緒に考えましたが、「AMHが低い=採卵できない」というわけではありません。
AMHはあくまで卵の数の目安であり、「質」とは別の話です。

でも、体外受精で何度も採卵に至らない場合、何らか体調が整っていないことが影響していることがあります。

いくら外から排卵を促す注射を打っても、”卵を育てる体の力” がなければ、卵はなかなか育たないかもしれません。

Kさんとお話しする中で確認されたこととしては、

・慢性的な睡眠不足(深夜1時ごろまで仕事や家事)
・疲れて一から食事を作ることが少なく、加工食品の割合が多い
・手足の冷えがひどく、特に下半身が冷える
・生理周期が不安定で、生理量も少ない
・仕事でのストレスが強く、寝ても疲れが取れない感覚がある

という状況でした。

これは典型的な「腎虚+血虚」の状態と考えられ、
Kさんには、腎を補い、血を養い、気の流れを整える漢方薬をご提案しました。

「数値」だけを見てしまうと、どうしても焦りや不安が生まれます。
でも体の本質的な力を育てることが、遠回りのようで一番の近道だと私は思っています。

3ヶ月ほど漢方を続けながら生活を整えていただいたところ、4回目に初めて採卵に成功されました。
採れた卵は1個でしたが、受精し、胚移植へと進むことができました。

卵子の数よりも質を意識しながら生活を見直すことで体も少しずつ元気になっていたのだと思います。

AMHが低いと言われると、「もう時間がない」「私は妊娠できない」と感じてしまうのも理解できます。

でも、AMHはあくまで現時点での「数」の目安です。
体の力を整えることで、残っている卵が育ちやすい環境をつくることをめざしましょう。

年齢のわりにAMHが低い、採卵がうまくいかない・・そんな悩みをお持ちの方は、ぜひ一度ご相談ください。
今から、できることを一つずつ見つけていきましょう。

妊娠への体づくりに近道はないかもしれません。
でもあなたにとっての最短ルートはあるはずです。

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