妊娠しづらく、流産しやすい理由

「やっと妊娠できても、また流産・・・」
という深刻なご相談をお受けすることがあります。

一つの要因として、多嚢胞性卵巣(PCO)・多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)が挙げられます。

PCOSは排卵が起こりにくいため妊娠しづらいという特徴がありますが、実はそれ以上に重要なのが、妊娠成立後の継続です。
医学データでは、PCOSの方の流産率は一般の約1.5〜2倍ほど高くなる傾向が指摘されています。
これは心理的にも大きな負担となり、「また同じことが起こるのでは」という不安にもつながりやすいでしょう。

PCOSの理由の一つとして、黄体化ホルモン(LH)が生まれつき高めであることが挙げられます。
LHが高い状態では卵巣が反応しにくく、排卵後の黄体形成が十分に行われにくくなるため、着床を支える黄体ホルモン(プロゲステロン)が不足しやすくなります。
この黄体機能の弱さは、着床後の妊娠継続に大きく影響を与えると考えられます。

まて、卵子の質もやや不安定になりやすいのが特徴です。
卵胞の「自浄作用」に関わるアポトーシス(古い卵胞を自然に片付ける働き)が弱いと言われており、その結果、未成熟の卵胞が卵巣内に残りやすくなります。
卵巣の中が“古い卵胞で混雑した状態”になると、新しい卵胞が育つスペースや環境が失われ、良い質の卵子が育ちにくくなるのです。
この状況は排卵周期を乱すだけでなく、染色体異常のリスクを高めてしまうことにもつながります。

そのため、排卵が起きたとしても、受精や着床がうまくいきにくかったり、妊娠しても初期の段階で継続が難しくなったりすることが起こるのです。
実際に、PCOSで妊娠された方が初期流産を繰り返され、体質改善のご相談にお越しになることもあります。

PCOSに伴う「卵胞が育ちにくい」「黄体ホルモンが不足しやすい」「卵子の質が安定しない」といった状況に対して、身体のバランスから整えていくのが漢方の得意とするところです。
卵巣のめぐりを良くし、余分に滞ったものを処理しやすい環境を整え、さらに黄体機能を補うことで、妊娠しづらさと流産リスクの両方に成果をあげることが期待できるのです。

PCOSの方にとっては、妊娠前の準備だけでなく、妊娠が成立してからが大切になります。
妊娠前と妊娠後で体調に応じて必要な漢方薬の内容が変わることも多く、適切に切り替えることで流産のリスクを下げ、安定した経過につなげることが目的となります。

妊娠のしづらさ、そして流産のしやすさ。
この二つが重なると心が押しつぶされそうになりますが、原因が分かれば対策もあります。
「体質だから仕方ない」ではなく、「整えていくことで変わっていく」ことを目ざしましょう。

一陽館薬局では、体質に応じて漢方で適切なサポートをご案内いたします。

妊娠への体づくりに近道はないかもしれません。
でもあなたにとっての最短ルートはあるはずです。

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