不妊との関係～コレステロールは少ないほうがいい？～
健康診断の結果や、血液検査の結果から「コレステロール値が高めですね」「脂質を控えましょう」と言われ、脂こい食事を好んだ覚えはないけど・・、ダイエットしなきゃ・・、とストレスを感じる方もおられます。
現代では、コレステロールといえば「動脈硬化や心筋梗塞のリスクになるもの」として、できるだけ低く抑えるべきものというイメージが広く浸透しています。
妊娠を望む方にとっても、体重管理や栄養バランスに気を配る過程で、「脂質はなるべく控えめに」「コレステロールは少ないほうが健康的」と思い込んでしまいがちです。
しかし実は、コレステロールは妊娠にとって非常に重要な成分であり、不足することで妊娠しづらくなる可能性があるのをご存知ですか？
私のカウンセリングの際にも、卵子がどうとか、タイミングがどうとか、よりも ”しっかり食べてね” と毎回お伝えするお客さまもおられます。
体質は人それぞれですが、代謝や神経や内臓が十分に機能するために必要な栄養はとらなくては健康や生活の質にも影響してしまいます。
元気であることは、希望が叶う第一歩だと思います。
コレステロールの役割として、まずは「性ホルモンの材料になる」ということが挙げられます。
女性ホルモンであるエストロゲンやプロゲステロン、そして男性ホルモンのテストステロンも、すべてコレステロールを原料として体内で合成されています。
つまり、コレステロールが不足してしまうと、これらのホルモンの分泌がうまくいかなくなり、排卵障害や月経不順などの症状につながる可能性があるのです。
実際に、極端なダイエットや脂質制限を行ってコレステロール値が著しく低くなってしまった女性に、無月経や不正出血が見られるケースは少なくありません。
また、BMIについては18.5未満の低体重の女性や、体脂肪率が極端に低い方では、脳の視床下部がホルモンの司令塔としてうまく働かなくなり、卵巣への指令が届かなくなるという「視床下部性無月経」の状態に陥ることもあります。
これはホルモンバランスが崩れてしまった結果であり、妊娠を望む上では大きな障害となってしまいます。
また、コレステロールには、いわゆる「善玉」と呼ばれるHDLコレステロールと、「悪玉」と呼ばれるLDLコレステロールがあります。
健康診断の結果では、LDLコレステロールが高いと注意を受けることが多いのですが、LDLも体にとっては必要不可欠な物質です。
LDLは細胞やホルモンの材料となるコレステロールを全身に運搬する役割を担っています。
LDLをむやみに下げ過ぎてしまうと、体の細胞を修復する力やホルモンを作る力まで落ちてしまう可能性があります。
「悪玉だからゼロにしたい」と考えるのではなく、体にとって必要なバランスを保つことが大切です。
漢方の視点から見ると、コレステロールの不足やホルモンバランスの乱れは、「血」や「腎」の不足と関係していることが多くあります。
「血」は、全身に栄養を巡らせ、女性の生理機能や子宮の状態にも大きく関わっています。
「血虚」の状態になると、月経周期の乱れや月経量の減少、顔色の悪さ、めまい、ふらつきなどが現れることがあります。
また、「腎」は、生命力の源とも言える臓腑であり、生殖や成長、老化と深く関係しています。
腎が弱る「腎虚」の状態では、ホルモン分泌の力が衰え、妊娠力の低下につながります。漢方では、このような体質を整えるために「補血」「補腎」といったアプローチをとります。
妊娠に必要なのは、「ただ数値が良い」ことではなく、ホルモンのバランスがとれており、卵巣や子宮が健やかに働き、心と体のバランスが安定していることです。
そうした「整った土台」があってこそ、自然と妊娠しやすい体がつくられていくのです。
コレステロールもまた、その土台を支える大切な構成要素の一つです。だからこそ、「低いほうがいい」という思い込みではなく、「自分の体が必要としている適切な状態」を目指すことが、妊活においてはとても重要なのです。
過剰なダイエットや脂質制限に心当たりのある方は、もう一度、食生活や生活習慣を見直してみてください。
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