「滞り」の原因~視点を変えて「瘀血」をみる~
タイプ的には「ドロドロ血」ではなさそうなのに、「瘀血」の症状がみられるかたも多く、「瘀血」は単純ではなく、そこに至る過程を見極めて対策を考える必要があります。
ドロドロ・・といえば、”食べ過ぎ” ”脂こい” ”甘い間食” などのイメージですが、血虚由来の瘀血は「過剰タイプ」ではなく、「不足タイプ」に該当するため、イメージと直結しにくいものかもしれません。
暑さによる気虚→血虚→瘀血という行程。
そしてその根底にある脾虚。
体質といっても単純な構成ではなく、さまざまな要因が積み上げられてカラダが作られていることがわかります。
漢方における「瘀血」とは、「血」が何らかの理由で滞り、流れが悪くなった状態を指します。
医学的な血流障害と近い部分もありますが、漢方ではそれを「単なる血流の問題」としてだけでなく、全身の気血水のバランスや五臓六腑の働きとの関係からとらえます。
◎血虚による瘀血とは?
「血虚」は、血の量そのものが不足している、あるいは血の質が悪く栄養としての働きが低下している状態です。
血が少なければ、まるで渇いた川のように、流れるべきものが流れなくなり、局所的な淀みが起こりやすくなるのです。
また、血には「潤す」「栄養を与える」という作用がありますが、血虚が続くと子宮や卵巣の組織が十分に滋養されなくなり、結果として冷えや痛み、不定愁訴の原因となることもあります。
とくに婦人科領域では、月経の量が少ない、色が黒く塊が混じる、生理痛が強いといった症状として現れますが、これらはすでに「血虚性瘀血」と呼ばれる状態になっていると考えられます。
◎気虚による瘀血とは?
一方で「気虚」は、体を動かすエネルギーである「気」が不足した状態を指します。
漢方では「気は血を推し動かす(気行則血行)」という考えがあり、気がなければ血は流れないとされます。
つまり、気虚の状態では、たとえ血の量に問題がなくても、その流れを促す力が弱いために瘀血が生じやすくなるのです。
特に長時間の過労、睡眠不足、慢性的なストレス、あるいは長引く病後などによって気が消耗していると、全身の循環が低下し、冷えや重だるさ、静脈のうっ滞感などが現れます。これはまさに「気虚性瘀血」の兆候であり、気づかぬうちに深部に蓄積していくタイプの瘀血といえます。
◎血虚×気虚の複合型瘀血とは?
血虚と気虚が併存しているケースは、女性の不妊や生理不順、慢性疲労の背景によく見られる状態です。
血のパワー不足に、さらに巡らせる力も弱いとなると、体内の巡りは大幅に低下し、瘀血の慢性化・固定化につながります。
このような場合は、血を補うだけ、気を補うだけでは改善しきれず、両面からの立て直しも必要になります。
このようなケースでは食事や生活リズムなどに課題を抱えておられることも多く、食養生や生活習慣の見直しによって、身体全体のエネルギーと血液の質を高めて効率を上げていくことが大切になります。
最近は、漢方に注目が集まり「瘀血」という言葉は「血の滞り」として理解されるものとなっていますが、その要因には血虚や気虚という「不足」という背景が影響していることもあります。
つまり見た目には痛みやしこり、色の変化など「実証」のような症状が出ていても、実際には「虚」の体質から発していることが多いのです。
一陽館薬局では、不足による瘀血を見極め、漢方で根本からの改善を目指します。
虚実の判別を取り違えると全く逆の効用を与えることになり、場合によっては増悪することもあります。
病名や症状だけで処方決定するのではなく、その成り立ちや体質面での特性に目を向けていくことが適切な処方判断につながります。
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