混同しがちな”自然素材”

漢方薬は、「自然のもの」ということから、拡大解釈のように、”自然つながり”のジャンルとの区別が曖昧になっている場面に出会うことがあります。

漢方薬は、お茶でもハーブでもありません。

「漢方って、自然のものだからハーブティーみたいなものでしょう。?」
といった認識を持たれたり、同類のようなイメージを持たれがちかもしれません。

しかし、漢方薬とお茶・ハーブは、「植物を利用している」という共通点があるだけで、その位置づけも目的も本質的に異なります。

水は水。
お茶はお茶。
薬は薬。

「植物からできている」と「医薬品」は同じではないのです。

お茶やハーブティーは食品です。
食品は栄養や嗜好性を目的として摂取され、日々の健康維持に役立つことはあっても、医学的診断や治療を目的とするものではありません。

一方、漢方薬は医薬品です。

日本では法律のもとで品質・有効性・安全性が管理され、医療現場でも広使用されています。

つまり、「植物だから食品」という考え方は成り立ちません。

例えば、同じ植物でも、食品として利用される部分と医薬品として利用される部分が異なることがあります。
また、乾燥・加熱・蒸製・炒製などの修治(炮製)によって薬効や安全性を調整し、医薬品として使用される生薬もあります。

漢方薬は、「植物を飲む」のではなく、「医学的に加工・評価された生薬から構成される医薬品」を服用しているのです。

一つひとつの生薬には、薬性(寒・熱・温・涼)、薬味(辛・甘・苦・酸・鹹)、帰経、昇降浮沈などの薬能があり、それらを組み合わせることで、一つの処方として成立します。

さらに、漢方には配伍(はいご)理論という考え方があります。

配伍とは、生薬同士の相互作用を利用して、
・薬効を高める
・作用の偏りを調整する 
・副作用を軽減する
・目的とする病態に適した働きを引き出す
ための処方設計です。

また、古典的には君・臣・佐・使(くん・しん・さ・し)という構成概念があり、「主薬」だけでなく「補助薬」や「調整薬」まで含めて一つの方剤が完成します。

このような考えは、単一成分を中心に作用を考える西洋薬とも、お茶やハーブとも異なる漢方薬独自の特徴です。

漢方薬は「症状」ではなく「病態」を治療することを目的とします。

例えば冷えという症状でも、
– 気虚によって熱を産生できないのか
– 血虚によって末梢まで栄養が届かないのか
– 瘀血によって循環が停滞しているのか
– 腎陽虚によって温煦作用が低下しているのか
により、選択される処方はまったく異なります。

同じ疾患名であっても処方が異なり、逆に異なる疾患でも同じ「証」であれば同一処方が選択されることがあります。

このような理論から、不妊症という、病気ではないバランスの乱れや体の働きの弱りにも対応することができるのです。

漢方薬は、生薬学・方剤学・漢方診断学という体系に基づいて構築されており、”植物そのもの”よりも、病態に応じて処方を構成するものです。
植物を原料としながらも、医学理論に基づき、生薬を決まった配合割合で組み合わせ、一人ひとりの病態に合わせて用いる医薬品です。

このような点から、同じ漢方薬でも、体質や証に合えば十分な効果が期待できる一方、合わなければ期待した反応が得られないこともあります。

この特性を正しく理解し、漢方への誤解や偏見を正すことが本来の効用を得ることにつながると思います。

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